勉強中の音楽がパフォーマンスに与える影響とは?

勉強中の音楽がパフォーマンスに与える影響とは?

勉強や仕事のお供に音楽をかけながら作業をする人は多いと思います。VIE Tunesでも「読書」や「仕事」のシーンが訴求されており、実際に読書や書き物をする際に音楽を聴く人の割合は40%、暗記中に音楽を聴く人の割合は20%いると言われています。

音楽を聴きながらタスクをこなすことで、パフォーマンスが向上するという人もいれば、音楽が妨げになってしまうという人もおり、意見はさまざまです。

そこで今回は、2022年ポルトガルのポルト大学で学生を対象に行われた、音楽がタスクのパフォーマンスに与える影響について研究した実験を紹介したいと思います。

 

※詳細:

Alessandra S. Souza, Luís Carlos Leal Barbosa(2023). Should We Turn off the Music? Music with Lyrics Interferes with Cognitive Tasks. PMC, 2024-6.

※引用元は、こちら

 

音楽はパフォーマンス妨害の要因?

この実験では、大学生に3つの条件下で4種類のタスクを実行してもらいます。条件は「無音」「歌詞のない音楽」「歌詞のついた音楽」の3つで、タスクは「単語記憶課題」「視覚的記憶課題」「読解」「算数」の4つの課題です。

読書中の音楽に焦点を当てた先行研究では、音楽に歌詞がついていることにより、パフォーマンスに有害な影響を与えるという結果が出ています。また、勉強中に音楽を聴くことを好む人ほど、音楽状態で無自覚にパフォーマンスが低くなってしまうという結果を示したものもあります。パフォーマンスの低下を本人が自覚していない理由としては、音楽を聴きながら実行するタスクの方は気分よく実行できるため、その結果に気づいていないからです。

 

無音、歌詞のない音楽、歌詞のついた音楽、3つの条件下でのタスク遂行

では、実際に3つのシチュエーション×4種類のタスクを行った結果を見ていきましょう。まずは、条件についての詳細です。この実験での「無音状態」とは、通常の環境音の中での実行を指します。この時、スマートフォンやTVの電源はOffにするように求められています。「歌詞のない音楽」は、ローファイ・ヒップホップと呼ばれる、ダウンテンポミュージックが流れます。これは勉強中の学生に人気の高い音楽として知られており、参加者はみな同じ1つの曲を聴きながらタスクを実行します。「歌詞のついた音楽」とは、第一言語であるポルトガル語の歌詞のついたポピュラー音楽で、こちらも参加者はみな同じ1つの曲でタスクを実行します。

次に、課題についての詳細です。参加者は4つの課題を「無音状態」「歌詞のない音楽」「歌詞のついた音楽」の3つの状態で行います。(4タスク× 3状態=12回)「単語記憶課題」は、20個の単語が1つずつ画面に表示されたあと、次に何個の単語を回答することができそうか、自分で個数を記入をします。そして空欄に覚えている単語を埋めていくという課題です。

「視覚記憶課題」も同様、20枚のカラー画像が1つずつ画面に表示され、次に何個の画像を回答できそうか記入し、灰色で塗られた画像を最初に映し出された画像と同じ色にするように、スライダーで選択していきます。

「読解」は、最後の単語が欠落している文章が20個あり、最後に来る単語を選択式で押下します。20個を回答し終えた後、次の20個の文章では何問回答できそうかを答え、前半と同様に問題を解きます。

最後に「算数」のタスクでは、20個の簡単な算数の問題が出題され、答えを5つの選択肢の中から選びます。「読解」のタスクと同様、最初の20問が終わると、次の20問で何問回答できそうかを答え、再度20問の問題を解きます。

これらの4つのタスクの実行後に参加者は以下項目でアンケートに回答します。「タスクの難易度」、「「無音状態」セッションと比較して「歌詞のない音楽」「歌詞のついた音楽」は、肯定的・否定的それぞれどのような影響を及ぼしたか」「流れた曲を知っていたか」「曲をどれほど楽しんだか」という簡単なアンケートに記入してもらうのが、実験の流れです。

 

「歌詞のついた音楽」がパフォーマンスに与える影響

ではそれぞれの条件×タスクでは、どのような結果が出たのでしょうか。まず「単語記憶課題」では、「歌詞のついた音楽」がわずかに記憶力の低下をもたらすことが示されました。「歌詞のない音楽」の条件下では、わずかに記憶力の低下が示されたように見えますが、「無音状態」「歌詞のついた音楽」と比較して、有意な差は見られませんでした。

「視覚記憶課題」では、「歌詞のない音楽」「歌詞のついた音楽」が共にパフォーマンスに負の結果をもたらすことが示されました。特に「歌詞のついた音楽」は、タスク中もタスク後の評価においても、パフォーマンスに悪影響を及ぼしていることを自覚する参加者が多い結果となりました。しかし、「歌詞のない音楽」についてはタスク後の評価で「無音状態」と比較して、パフォーマンスに有益であったと答える人が多く見られました。

「読解」では、音楽の条件がパフォーマンスにプラスの影響を与えることが示された唯一の結果となりました。特に「歌詞のない音楽」は、「無音状態」と比較して良い結果を出しました。また事後評価では、「歌詞のない音楽」をパフォーマンスに良い影響を与えたと認識する参加者が多く、「歌詞のついた音楽」と比較して、曲自体も好まれる傾向にありました。ただ、このタスクのパフォーマンス精度は全体的に高く、パフォーマンスの改善に音楽が役だったというには十分な結果は得られませんでした。

「算数」では、「無音状態」と比較して「歌詞のついた音楽」は有意な差は見られなかったものの、わずかにパフォーマンスが低下する傾向が見られました。タスク中に行われる正答率の予測を尋ねる問いでは、「無音状態」と比較して「歌詞のついた音楽」がやや低い結果となり、タスク後の評価では「歌詞のない音楽」はパフォーマンスに影響しないが、「歌詞のついた音楽」はパフォーマンスに悪い影響を与えたと回答する人が多い結果となりました。

VIE Tunesの効果を最大限に発揮してお使いいただくために

これらの結果から、「歌詞のついた音楽」は「無音状態」と比較して、言語的および視覚的記憶が著しく低下することが明らかになりました。また今回使用したローファイ・ヒップホップは、勉強の助けになると言われていますが、あまり有意な結果は見られませんでした。しかし、「歌詞のついた音楽」と比較すると、「歌詞のない音楽」の方が実際のパフォーマンスの結果も、参加者の評価も高い傾向が見られました。 

実際のパフォーマンスに与える影響としては、「無音状態」が一番良い結果となりましたが、特徴的なのは、音楽の有無によってタスクの楽しさが変わる点や、よりパフォーマンスが発揮できたのではないかという評価につながる点です。

これらは勉強をしたくてもなかなか気分が乗らない時に、歌詞のないニューロミュージックを聴きながら、まずは5分机に向かってウォーミングアップをしてみる、というような習慣をつけることによって、気分が上がり勉強モードに切り替えることが容易になることが想像できます。もちろんニューロミュージックが「頭の良くなる音楽」のように、テストの結果に直結する音楽になるほど喜ばしいものはないと思いますが、自分が最高の状態で勉強や仕事に向き合うための手段としては、大きな助けとなると思います。

また、読解のパフォーマンスが上がった例のように、簡単なタスクの前では、「歌詞のない音楽」は有意に働く可能性が示されました。このように、どのようなタスクの時にニューロミュージックが一番効果を発揮できるのか、といったあなたのベストタイミングをVIE Tunesを通してぜひ見つけてみてください。

 

※詳細:

Alessandra S. Souza, Luís Carlos Leal Barbosa(2023). Should We Turn off the Music? Music with Lyrics Interferes with Cognitive Tasks. PMC, 2024-6.


※引用元は、こちら